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いっつもアタシに甘えてばかりで。 どっちが親なのかって感じ。 急にお店閉めたと思ったら。 明日から海外旅行行くとか訳わかんないし。 和希が体調良くなった途端に妙にハリキっちゃって。 お化粧バッチリ、オシャレしまくりで買い物行ったり。 あ、そうそう。ママったら元タレントなのよ~とか言って、 待ち行く人に愛想振りまくっちゃった日もあったっけ。 もう恥ずかしくて顔から火が出るかと思ったし..... はぁ…。 ホント自由な人。 アタシも和希も似なくて良かった。 つくづくそう思う。 なんてね。 (風邪、引いちゃうよ) 今日もたくさんのお客さん相手に一生懸命働いてたママ。 アタシが学校やモデルに集中してる間も、ずっと頑張ってるんだよね。 疲れて眠っちゃったママに、そっと毛布をかけてあげる。 本当はもっと傍にいてあげたいけれど。 アタシ…知ってるよ。 ママが寂しくて泣いちゃう日がある事を。 ―――ゴメンね 時々、アタシはあの日の事を思い出す。 行かないで―――と引き止めてくれた時の事を。 嬉しかった。 でも、悲しくもあった。 アタシは親不幸なのかなって。 「……美希」 もうすぐ和希がやってくる。 久しぶりに三人で夕食。 だって、今日は特別な日だから。 普段にも増して、ママがアタシたちに甘える日。 さてと、頑張りますか! ママ。 いつもありがとう。 大好きよ。 ~END~
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「あら、美希」 「ん? ああ、せつな」 道端で偶然、出会った二人。 微笑みながら挨拶をかわしながらも、黒髪の少女は、蒼い瞳の親友が抱える大荷物に目を見張る。 「どうしたのよ、それ」 「ん、ああ、これね。ちょっと、お届け物よ」 片手に大きな紙袋を抱えながら、逆の手でトランクを引く彼女。背中にはリュックも背負っていて。 さらに言えば、普段の彼女とは違い、あまりお洒落に気を使った格好では無かった。強いて言えば、動きやすさを 重視したような。 「お届け物って――――どこに? 送ったりとか、車で届けたり、出来ないの?」 「そんなに遠いわけじゃないからね。それに、これぐらいたいしたことないわ。こう見えてあたし、結構、力はある方な んだから」 にこやかに彼女はウィンクをして見せるが、その額には、真冬だというのに玉の汗が浮かんでいて。 大変なんだ、ということを見て取って、せつなはため息を一つ吐いて、彼女に手を差し出した。 「手伝うわ。一つ、荷物、貸して」 「え? いいわよ、別に」 「なに言ってるの。そんなに汗かいて。 いいから渡しなさいって」 そう言いながら、せつなは強引に、彼女の抱えていた荷物を奪う。持ってみてわかったが、かなりの重さだ。中を覗 くと、ぬいぐるみやお菓子、パーティーの飾り付けが入っていて。 「こんなに重いもの、持って歩いてたの?」 呆れながら言うせつなから、美希はそっと目をそらす。その態度に、また、彼女はため息を吐く。 「ホント、直した方がいいと思うわよ、なんでも自分でしょい込む性格」 「せつなには言われたくないんだけどなー」 「何か言った?」 ジロッ、と睨んでくるせつなに、美希は笑顔を返す。 「ううん、なんでもないわよー」 「――――まったく。それで? どこに持って行くの?」 「保育園よ。あたしが昔、預けられてたね」 聖夜に響け 幸せのリズム 「あー。美希お姉ちゃんだー」 「美希お姉ちゃーん」 「お姉ちゃん、遊ぼー」 美希が部屋に姿を現すや否や、中にいた子供達がいっせいに、彼女の元へと集まってきた。 「みんな、久しぶり。元気にしてた――――って、ちょっと!! 飛び付かないの!! イタタタ、髪を引っ張らないで!!」 もみくちゃになりながらも、何とか踏ん張っていた美希だったが、結局、こらえきれず潰されてしまう。それでも構わ ず集まってくる子供達を美希は叱るが、一向に静まらない。 そんな彼女の姿を見て、せつなは苦笑する。なるほど、こうなることがわかってたから、いつもみたいなお洒落な恰 好じゃなかったんだ、と。 「せつなー。見てないで、助けてよー」 「え? どうやって?」 助けを求めてくる美希に、きょとんとした顔でせつなは返す。 「お姉ちゃん、この人は?」 「せつなお姉ちゃんよー。今日は、皆と一緒に遊んでくれるんですってー」 「え? え?」 「ホント!? わーい、お姉ちゃん、一緒に遊ぼーっ!!」 呆気に取られる彼女の元に、わらわらと集ってくる子供達。 「い、いや、あの、私は――――」 断ろうとして、彼女は言葉に詰まる。どの子の瞳も、楽しそうにキラキラと輝いていて。 困惑しながら、責めるような眼をせつなは美希に向けるが、 「良かったわねー、皆。せつなお姉ちゃん、今日はたーっぷり、遊んでくれるんですってー」 にこやかな――――そして少し、意地悪な彼女の笑顔を見て。 はぁ。 また一つ、大きなため息をつきながら、仕方ないか、と覚悟を決めたのだった。 それは、想像以上の激務だった。 「疲れた……」 ぐったりとした表情で、うつぶせに横たわるせつな。ラブ等が見れば、あのせつなが、と驚いたことだろう。それほど に、凛とした普段の雰囲気がまるで感じられない、へたりきった姿だった。 たれせつな、と美希は思わず、有名なキャラを連想して、こっそりと名付ける。 そんな、精も根も尽きたという彼女の周りでは、お昼寝の時間となった子供達がすやすやと健康的な寝息をたてて いて。 「やー、ホント、疲れたわー」 そう言いながら、美希が座ったまま両手をぐっと前に伸ばす。こちらも疲労が顔に色濃く出ていたが、それ以上に やりとげたという達成感が満ち溢れていた。 「ありがとうね、せつな。付き合ってくれて」 「それはいいんだけど――――元気ね、美希」 「ま、慣れてるからね」 「二人とも、今日は本当に助かったわ」 そこに現れた保育園の先生が、彼女達の前にジュースを置く。慌てて起き上がり、正座をするせつなに、初老に近 いその女性は、コロコロと玉のような声で笑う。 「そんなに気を遣わないでいいのよ。楽にしててちょうだい」 言われて、照れくささにカーッと頬を染めるせつなの姿に、彼女はもう一度、笑う。子供達を起こさないように、声を 抑えて、だったけれど。 「本当に、美希ちゃん、いつもありがとう」 「いえ、先生。あたしが好きでやってることですから」 先生の言葉に、美希は首を横に振りながら、笑って答える。そんな二人を、怪訝そうに見つめるせつなに、先生は 目を細めて、 「美希ちゃんはね、最近、よくここのお手伝いに来てくれてるのよ」 「よくだなんて、そんな。時々ですよ」 「それでも嬉しいわ。子供達も、皆、美希ちゃんが来たら喜んでるのよ」 はにかむ美希と、ニコニコ笑顔の先生を見て、せつなは首をちょこんと傾げる。が、その場では何も聞かなかった。 なんとなく、そうした方がいい気がしたから。 「あたしね、さっきも言ったけれど、この保育園に預けられてたことがあったの」 せつなが美希に尋ねられたのは、お昼寝の時間が終わり、子供達が今度は外で遊び始めてからだった。 元気に駆け回る彼らを見ながら、せつなの問いかけに美希はそう答えた。 「その頃はもう、ラブともブッキーとも知り合ってたんだけど、二人がここに来たのは、あたしが入ってから一年ぐらい 後だったかな」 「どうして、そんな差が?」 「ほら、うちって、ママが離婚したでしょ? だから、ママが働くしかなくてね。さすがに、まだ小さいあたしを一人にして おけないからって、ここに預けられてたの」 そっと、せつなは目を伏せる。 「ごめんなさい、変なこと聞いて」 「あら、いいのよ。別に気にしないで。よくある話じゃない」 美希の言葉には、何の気負いも、てらいもない。それが自然なことだと受け入れているようにも感じられて。 「ま、さすがに預けられてた頃のことなんて、おぼろげにしか思い出せないんだけどね」 「それで、どうしてお手伝いに?」 最初の問いかけに答えてもらっていない。それに気付いて、問いかけるせつなに、美希は改めて苦笑する。 「前に、話したと思うんだけど――――ほら、あたし、ベリーソードをなかなか手に入れられなくて、焦ってたことがあっ たのよ」 ああ、とせつなは頷く。確かに、そんなことがあったと聞いた。ピーチやベリーが新たな力に目覚めたにも関わらず、 自分だけどうして、と。 「その時にね、シフォンをお世話すれば、新しい力が手に入るかも、って思ってさ――――ま、空回りだったんけどね、 結局は」 「美希らしいわね、それ」 「こら、言うようになったわね、せつなも」 拳を振り上げると、せつなはクスクスと笑いながら、身をよじってかわす素振りを見せる。 変わったな、と美希は暖かな気持ちで思う。昔は、こんな風に、からかわれることがあるなんて思ってもいなかった から。 「ごめんごめん、それで?」 「ん――――まあ、めでたくキュアスティックを手に入れることは出来たんだけど……ちょっと、思い出しちゃったの よね」 「なにを?」 「ここに、預けられてた頃のこと」 言いながら、美希は優しい目を、はしゃぐ子供達に向ける。 「ママは、ああ見えて、やる時はやる人だからさ。お仕事だって、すごく頑張ってるし――――ま、急に海外に行ったり することもあるけどさ」 苦笑する彼女に、せつなもならう。確かに、彼女の母親、レミは、仕事熱心だ。よくラブを捕まえては、ヘアモデルに なってくれと頼んでる。 一方で、天真爛漫、というよりは子供っぽい部分が残っていることも否めない。この前も、事前にちゃんとした話もな く、いきなり美希を残して海外に旅立ってしまったことがあった。 「だから、ね。迎えに来るのは、いつも最後の方だった。ラブやブッキーが帰っても、あたしは一人でここにいてね。 まぁ、先生達が構ってくれてたけど――――」 「寂しかったの?」 「……そうね。寂しかった」 コクリ、と頷く美希。だがその顔に、言葉ほどの寂寥は現れていない。ただ、懐かしむだけ。 「だから、かな。時々、ここに来るようになったの。お手伝いなんて、たいしたことも出来ないけれど、あたしがいて、 喜んでくれる子がいるし――――それに、少しは最後まで残ってる子の話し相手になってあげれば、その子が寂しく ないかな、って」 「優しいのね、美希は」 素直で飾らぬ彼女の姿に、せつなは思ったままの言葉を投げる。 美希は、それを受けて、またはにかむように笑って。 「大したことないわ。普通よ、普通」 そう、言ったのだった。 ――――後篇に続く―――― 競-220へ
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「ぅわ~っ! 美希たん、それカッコイイ!」 「うん、すっごくキレイ…」 「これはね、ロケットっていうんだって。ママが買ってくれたのよ。 ほら、ここが開くんだから」 「あ、ホントだ…でも、ここに何か入れるの?」 「ここに好きな人の写真を入れると、その人と結ばれるんだって」 「美希ちゃん、好きな子がいるの?」 「ううん。でも、大きくなったら、好きな人の写真を入れるんだ。 そして…アタシは、その人と結ばれるの!」 「うん! きっと美希たんなら、ちょーイケメンの彼氏と、幸せゲットだよね!」 「そうだね。私も、信じてる!」 「はぁ…」 土曜日の昼下がり。 祈里は一人、隣町のデパートへ来ていた。 キレイな洋服に、可愛いアクセサリー。 ペット用品売り場に、書店の「動物の本」コーナー。 いつもは楽しい買い物のはずなのに、ちっとも楽しくない。 きっと、今朝見た夢のせいだろう。 それはまだ、許されぬ想いを抱く前のこと―。 【 message for you・第2話 】 あれは確か、中学に入る少し前だったろうか。 親友の胸元で、銀色に輝くロケット。 大人びた雰囲気の美希に、とてもよく似合っていた。 あのロケット、今はどうしているのだろう? ふと、想像してしまう。 彼女の細い首から提げられた、銀のロケット。 その中には、きっと私の知らない誰かの写真―。 「…はぁ…」 私、信じられない。 私、信じたくない。 想像すればするほど、気分は重くなる。 今も一人、ベンチに腰掛けてため息をつくばかり。 『…美希ちゃん…』 今頃、どうしているのかな。 カズちゃんとお出かけ? それとも、別の誰かと? その“誰か”の隣で、美希ちゃんは楽しそうに微笑んで。 手をつないで、腕を組んで、そして―。 「……っ……」 胸の奥が、きゅっと締め付けられる。 そんな美希を想像して。 そんな美希を祝福する、自分の姿を想像して。 『おめでとう、美希ちゃん!』 『すっごく素敵な人ね!』 『ううん、美希ちゃんなら当然だよ。私、信じてた!』 ……何を? 『もう…帰ろう』 祈里は、ベンチから立ち上がった。 一度深呼吸をして、トートバッグの中を覗き込む。 その中には、美希に宛てた白い封筒。 こんなもの、もう捨ててしまおう。 そうすればきっと、この想いも忘れられる。 だから、誰にも見つからないように、隣町までやってきたんだもの。 ビリビリに破いて、どこかのゴミ箱に捨ててしまおう。 封筒も、手紙も、私の想いも。 そしたらきっと、いつもの“ブッキー”でいられる。 みんなと笑いあって、カオルちゃんのドーナツを食べて、ダンスに打ち込んで。 そんな、いつもの私に戻れる。 …私、信じてる。 祈里の歩調は、いつになく早かった。 やがて視線の先、エスカレーターのすぐそばに、ゴミ箱を見つける。 何もかも、これで終わりになる。終わりにできる。 そう思うと、足取りは更に早くなる。 そして祈里は、 「……っ!」 脇の通路から現れた人影に、気付かなかった。 「きゃっ!」 「きゃぁっ!」 尻餅をつき、バッグの中身を床にバラ撒いてしまう祈里。 見ると、相手の荷物も床に散乱してしまったようだ。 「ご、ごめんなさいっ!」 ぶつかってしまった相手の顔も見ず、慌てて荷物を拾い集める。 「いえ、こちらこそ…って、ブッキー?」 「えっ…美希ちゃん…?」 祈里は思わず固まってしまった。 一番会いたかった人。 一番会いたくなかった人。 そんな美希に、出会ってしまったから。 「これでよし…っと」 荷物を拾い終え、立ち上がる二人。 とりあえず、美希に封筒を見られる前に、バッグに入れる事はできた。 「本当にゴメンね、ブッキー。大丈夫だった?」 「うん…私の方こそ、ごめんなさい…」 視線を合わせられない。 目の端に映る美希は、どこか訝しげな表情だ。 「ブッキー、用事じゃなかったっけ。もう済んだの?」 「う…うん…まあ…。美希ちゃんこそ、カズちゃんと一緒じゃないの?」 それがね、と美希。 「ゆうべ電話したんだけど、和希も先約があるんだって。 お陰で、一人寂しくショッピングってワケ」 美希は苦笑混じりに肩をすくめる。 「そ…そうなんだ…」 「でも、ブッキーに会えたのは運が良かったわ。 良かったら、一緒に回らない?」 笑顔の美希だが、祈里は答えに困ってしまう。 「え…その…私…」 「あ、もしかして、これからお昼? だったら、ここのレストラン街に行きましょ! 先月、すっごく美味しいパスタのお店が…」 そう言って、美希は祈里の手を握る。 いつもの調子で、ぎゅっと。 だけど。 「い……いやっ!」 祈里は、美希の手を払いのけてしまった。 「えっ…?」 「あ…」 その瞬間、二人の時間が凍りつく。 美希は、何が起きたか分からない表情を見せていて。 「あ…あの…わ、私……ご、ごめんなさいっ!」 気がついた時には、祈里は美希に背を向けて駆け出していた。 「ちょ…ブッキー!? ブッキー!」 その夜、自分の部屋で。 椅子に座り、勉強机に突っ伏す祈里の姿があった。 「美希ちゃん…」 その名を口にしただけで、胸が苦しくなる。 手のひらに残った、美希の手の温もり。 指先に残った、しなやかな美希の指の感触。 苦しくて、せつなくて、愛しすぎて。 「………」 視線を移した先は、机の上のフォトフレーム。 ミユキさんがいて、ラブちゃんがいて、美希ちゃんがいて、私がいて。 3人でのダンスレッスンを始めた日、記念に撮った写真だ。 あの日、笑顔で迎えてくれた美希ちゃん。 “ようこそブッキー”って、横断幕まで用意してくれて。 帰り道、字を間違えていたことに気付いて、頭を抱えてたっけ。 「せっかくブッキーのために用意したのに…アタシ、完璧じゃない~っ!」 気にしない気にしない、とラブちゃんが笑って。 私も、こっそり苦笑いして。 凹んでいた美希ちゃんも、つられて笑って。 そんな時間が大好きだった。 大好きだった、のに。 「美希ちゃん…」 写真の中で、二人は並んで笑っていた。 今日だって、美希ちゃんは笑ってたのに。 それなのに、私は―。 悔やんでも、悔やんでも、悔やんでも、悔やんでも。 悔やみきれない想いに、祈里の胸は張り裂けそうだった。 「あ…」 バイブレーションの音。 リンクルンのディスプレイには、<蒼乃美希>の文字。 もう、メールは3回も来た。 そしてどうやら、今度は留守電のようだった。 でも、メールを読む気にも、メッセージを聞く気にもなれない。 『もう、寝ちゃおう…』 眠れるかどうかは分からないけれど、とりあえずベッドに入ろう。 椅子から立ち上がり、床に置いてあったバッグを掴む。 結局、今日は捨てられなかった手紙。 またいつか、時間を作って…。 「…あれ…?」 祈里は、異変に気付いた。 バッグの中から出てきた、白い封筒。 美希に宛てたものだが、自分の字ではなかった。 しかも、封筒の隅には会社の名前と住所。 確か、美希がよく登場するファッション誌の出版社だ。 『まさか…!?』 一方、美希の部屋では。 「それじゃ、また明日、レッスンでね。 …もし、もしこれを聞いてくれてたら…連絡、くれると嬉しいな…じゃ…」 メッセージを伝え、電話を切る。 「はぁ…」 そして、出るのはため息。 落ち込んでいても仕方ない。 明日ダンスレッスンで会うのだし、ブッキーにはその時にでも話そう。 そう自分に言い聞かせているが、どうしても気持ちが前向きにならない。 「ブッキー…」 とりあえず、今夜は寝てしまおう。 そう決めて、美希はドアノブに引っかけたままのバッグを掴んだ。 今日の撮影の時、雑誌社の人からもらったチケット。 とあるブランドの発表会への、特別招待券だ。 忘れないうちに、机の中にでもしまっておかなくちゃ…。 「…あれ…?」 美希は、異変に気付いた。 バッグの中から出てきた、白い封筒。 自身に宛てたものだが、どこかで見覚えのある字だった。 しかも、封筒の隅に書かれていたはずの、雑誌社の名前が無い。 美希は首を捻りつつ、封筒を裏返す。 「…あ…」 封筒には、差出人の名が記されていた。 「 山吹 祈里 」 ~ To Be Continued ~ 3-443
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春。 出会いと別れの季節。 そして、新しい始まりの季節。 新しい生活の、人生の起点としてこの季節を意識する人も少なくないだろう。 満開の桜並木の中、学校へと続くこの一本道を歩く少女もその一人だった。 その内気な性格を象徴するかのような、厚いレンズの丸眼鏡を掛けた赤髪の少女。 祖母と一緒に暮らすことになって、この街にやってきた彼女は今日が転校一日目。 (私、変わります!変わって見せます!!) これを機会に内向的な自分を変えたいと思っている彼女にとって、 大事な大事な始まりの日。 その一日に大成功をもたらす為にと、先程から少女は桜並木の下の花壇の中を見回り、 あるものを探していた。 「!」 やがて目当ての物を見つけると、駆け寄り、しゃがみ込んでそれをじっと見つめる。 「ありました、四葉のクローバーです。花言葉は幸福!」 探していた物は四葉のクローバー。 突然変異種の為に滅多に見つからないそれは、故に幸福のシンボルとされている。 「クローバーさん、私のお願い、叶えてください!」 そして、少女がそれを求めたのも、その言い伝えがあるから。 この幸福の象徴に願えば、きっと、自分は変われると。 願いを込めて、その四つ葉の葉の一片をそっと弾く。 「……え?」 瞬間、世界が一変する。 目の前のクローバーも、桜並木も、行き交う人の姿も消え失せ―。 「丘の……上?」 少女がいたのは、高い丘の上。 辺り一面には日が降り注ぎ、その中で白い花が咲き乱れている。 そして眼下には、遠く広がる町並みが見て取れる。 「どこですか……ここ?」 見覚えの無い場所だ。 この丘も、この景色も、今までの彼女の生きてきた記憶の中に該当するものは無い。 「でも、なんだか……素敵な場所ですね」 太陽の光を一杯に浴びて輝く周囲の花々。 見下ろす街の中を行き交う人々の姿。 知らない場所だが、訪れるものが何者であっても優しく受け入れてくれる、 そう思える場所。 ふと、周囲に咲く花々の姿が少女の目に留まる。 花好きの少女は、すぐにその名前に思い当たる。 「シロツメクサ……クローバーの別名……でもなんで?」 シロツメクサが花をつけるのは5月から9月の間。 桜咲くこの季節には、このように満開になることなど無い筈なのだが。 「それはね、ここが幸せの町だから」 それを疑問に思った少女に、背中から掛けられる声があった。 「!」 声のした方に、振り向く。 「……?」 そこにいたのは、一人の少女。 何処かのアイドルのようなフリフリのついたピンク色の服を着て、 ツインテールで束ねられたその金色の髪を腰まで伸ばしている。 そして特徴的なのは、ツインテールを束ねている大きなハートマークと、 胸元に付けられた四つ葉のクローバーを思わせるアクセサリ。 「あの……貴方、誰ですか?」 知らない人。 だけど、誰かに似ている気がする。 姿格好は違えども、目の前の少女は、 夢の中で戦っていたあの人に雰囲気がなんとなく似ているような。 その思いが少女に声を出させた。 しかし金色の髪の少女は、その問いには答えずに、 「貴方が……次の子なんだね」 柔らかい笑みと共に、そう彼女に告げた。 「次……?」 そう言われた事で、少女はある事実に気付く。 今まで新しい学校の制服を着ていた筈の自分の姿。 それが変化していることに。 (な、なんですか……これ?!) 目の前の金髪の少女と同じく、フリフリの付いた衣装。 自分のは白と赤を基調にしており、体のあちこちに花の形をした飾り。 そして胸元には大きなリボンがあしらわれている。 「コ、コスプレですかーーーっ!」 着替えた覚えも無いのにこんな格好をしている自分に混乱して、戸惑う。 そんな少女の元に、金髪の少女が歩み寄って来た。 「あ、あの……」 間近でじっと顔を見つめられる。 その事で緊張を得た少女の体と心を解きほぐすかのように、 金髪の少女は顔を崩し、笑顔で声を掛けてきた。 「ね、知ってる?四つ葉のクローバーのそれぞれの葉の意味」 「え?えっとぉ……」 「愛、希望、祈り、幸せ、その4つのハートが四葉のそれぞれに込められているんだよ」 少女の回答を待たずして、自分で答えを告げる金髪の少女。 彼女は少女の右手を掴み、体の前に導くと、 自らの右手に持っていたものをその手の平の上に置く。 「これって……」 渡されたものを見る。 それは、今まさに意味を問われた四つ葉のクローバーそのもの。 「あげるよ」 「え、でも、こんな貴重なもの」 受け取れない。 そう言って返そうとした少女の動きが止められる。 金髪の少女の、見るもの全てを包み込むような慈愛の視線によって。 「いいんだよ、これからの貴方には必要だと思うから。 その代わり、これだけは忘れないで。 そのクローバーで言うなら、あたしも貴方も、一つの葉に過ぎないと言う事を」 「……」 「一人で頑張ろうとしても、どうしても出来ることには限界がある。 でも、他の葉と一緒になれば、ハートを一つにすれば、奇跡を起こせる。 4つのハートを一つにすれば、どんな困難も乗り越えられる」 「4つの、ハート?」 「貴方にもいるんじゃないかな、4つじゃないかもしれないけど…… ハートを一つに出来る、大事な仲間が」 そう言って金髪の少女は、胸元の四葉のアクセサリにそっと触れる。 それが彼女の大切な人達との絆だと言わんばかりに、愛おしそうに、優しく撫でる。 「仲間、ですか……」 少女は思う。 彼女が何を言いたいのか、その全部は理解出来ない。 でも、大事な事を伝えてくれているという事はわかる。 一人では出来ないこと、仲間がいれば出来ること。 それはきっと、彼女の願い―変わりたいという事―とも無関係では無いだろう。 だから、答えてみせる。 大事なものと、想いを伝えてくれた彼女へと、精一杯の気持ちで。 「はい!今はまだいるかわからないですけど……きっと見つけてみせます!」 「ん、いい返事」 答えに満足げに微笑むと、金髪の少女は再び歩み始める。 すれ違い様、少女の肩をポンと、優しく叩くと 「じゃ、頑張ってね」 そう告げて、少女の脇を通り、彼女に背を向ける方向へと進んでいく。 「あ、あの、待ってください!まだ……」 名前も聞いていないし、クローバーのお礼も言っていない。 そう思って呼び止めようとした少女だったが。 「!」 突然、赤い光が発生する。 その光は金髪の少女を中心に発生し、周囲に広がっていく。 そして光が金髪の少女の姿を覆い、その姿が徐々に見えなくなっていく中で、少女は見た。 赤い光の中からもう一人、光の色と同じ、赤い服を纏った少女が現れ、 金髪の少女に寄り添い、共に歩み去っていくのを。 (あれが、あの人のハートを一つに出来る仲間、なんでしょうか? なんだか……うらやましいです) そう思った瞬間、再び世界が一変する。 「……え?」 ふと気が付くと、そこは通学路の花壇の前。 少女は、先程願いを掛けた四葉のクローバーの前にしゃがみこんでいた。 (な、なんでしょうか……今のは) 思い返しても不思議な光景だった。 明らかに今とは違う場所にいて、妙に現実感があって。 でも、今ここにいるということは、やっぱり現実では無いわけで。 (白昼夢……ってわけじゃないですよね) だとしたら問題だ。 転校初日から通学路の途中で、しかもこんな姿勢で眠り込んでしまうなんて。 変わりたい、という願いがプレッシャーになっているのだろうか。 そう思って頭を抱え込みそうになった彼女は、あるものに気付く。 右手に握りこまれていた、それに。 「え、嘘……」 開いた手の中にあったのは、四つ葉のクローバー。 先程、丘の上で金髪の少女から渡されたもの。 それがここにあると言う事は。 (夢じゃ……ない?!) 願いを掛けた方のクローバーはちゃんと花壇にある。 周囲に同じ四つ葉のクローバーは無かった筈。 だからこれは、間違いなく彼女に渡されたもの。 「じゃあ、あれは一体?」 ここじゃない場所、知らない人だけどよく知っているような少女。 夢じゃないとすると一体なんなのか。 「……」 考えてみても、今の少女には明確な答えを出せるはずも無い。 だから、彼女の思考はあるものに結び付けての納得を得る事にした。 (……もしかして、クローバーさんに願ったから?) シロツメクサが一面に生えた場所に、 クローバーのアクセサリを胸に着けた少女。 そして、クローバーに願いを掛けた自分。 それにクローバーが答えてくれたのだろうか。 いや、きっとそうに違いないと。 (だったら、私も頑張らないと) クローバーが応えてくれたのだから、幸福を味方に付けた様なものだ。 だとしたら後は自分次第で、願いはきっと叶う。 きっと、私は変われる。 そう思った少女は、決意を込めて、すっと立ち上がる。 「よーし、頑張るぞ!オー!!」 気合と共に両手を広げ、声を張り上げる。 (よしっ!!) 心の中で更にガッツポーズ。 幸先の良いスタートを切る事を出来たと、自身に喝采を送る。 しかし。 「……あ」 行き交う人の多いこの場所で、大声で叫ぶ。 それによって否応なしに注目を集めてしまった事に気付く。 同じ制服を着た生徒達の視線が自分に向けられ、時折笑い声も聞こえてくる。 「うう……」 湯沸かし器のように瞬間で赤くなる少女の顔。 この場にいることがいたたまれないとばかりに、そろそろと数歩を歩み出すと、 そこからは勢いをつけて、脱兎の如く学校へと走り去るのだった。 そして、一部始終を見守っていた花壇の四葉のクローバーが 風も無いのに、数度その身を揺らす。 走り去った少女の様子を可笑しいと笑うように。 そして、彼女に頑張れとエールを送るかのように。
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美希「うかない顔ね、せつな。どうかしたの?」 せつな「私ね、気が付かないうちに、視力がかなり落ちてるみたいなの。」 ラブ「えーっ!?ドーナツの穴が、よく見えないとか?」 せつな「それって悪過ぎると思うけど・・・。ほら、この前学校で視力検査があったでしょう?その結果が、2.0だったの。」 ラ・美「・・・・・・。」 祈里「あのね、せつなちゃん。学校の視力検査では、2.0以上は測らないの。それくらいよく見えれば、もう十分だから、って。」 せつな「そうなの?」 ラブ「じゃあさ、ちゃんと測ったら、せつなの視力ってどれくらいなの?」 せつな「そうね・・・。今まで、4.0を切ったことは無いわ。」 ラブ「すごっ・・・。」 美希「どんだけ見えるのよ・・・。」 祈里「そう言えば、ラブちゃんも目はいいんだよね?」 美希「ちょっとブッキー!このタイミングで訊く?って言うか、「目は」って・・・」 ラブ「うん!あたしは小学校上がってからずーっと、視力1.5だよっ!」 美希「・・・さすがラブだわ。気にしないのね。」 祈里「いいなぁ。美希ちゃんは?」 美希「アタシは・・・ラブやせつなほどは、良くないわよ。」 祈里「そうなんだ。わたしは最近、黒板の文字が見えにくくなっちゃって。」 ラブ「ブッキーは、勉強のしすぎだよぉ。あのね、遠いところを見るようにするといいんだって。あたしとせつなは、ベランダでしょっちゅう、星や月を見てるもんねっ!」 せつな「ええ。でも、私は月よりもラブの・・・」 ラブ「え?何か言った?せつな。」 せつな「ううん、何でもないの!(月よりもラブの顔を見てる、なんて言えない・・・。)」 祈里「せつなちゃん、顔、真っ赤・・・。」 美希「ふふ~ん。まあその話は後でじ~っくり聞くとして、遠くを見渡せる場所なら、他にもあるんじゃない?」 ――ということで、みんなでクローバーの丘へ。 美希「やっぱり、ここからなら四つ葉町がひと目で見渡せるわね。」 ラブ「うわーっ、見て見て、あの犬!あの人、可愛い巻き毛の犬を二匹連れているよ!」 せつな「ホントね。良く似た犬だわ。兄弟かしら。」 祈里「ううん、お友達だと思うけど、兄弟じゃないわ。手前の子はアメリカン・コッカー・スパニエルで、向こう側の子がイングリッシュ・コッカー・スパニエルね。良く似た犬種だけど、ほら、手前の子の方が、頭の形が丸いし、毛の長さが少し長いでしょう?」 ラブ「たはは~。毛が長いって言われても・・・。」 美希「そんなの、遠すぎてわかんないわよ。」 せつな「凄いじゃない、ブッキー。よく見えるわね。」 祈里「え、そう?やっぱり好きなものだと、違うのかしら。」 ラブ「わかった!ブッキーは、遠くのワンちゃんを見るようにすればいいんだよ。じゃあじゃあ、美希たんは~・・・」 せつな「ねぇ、美希。あそこに見える、赤い看板って何かしら。」 美希「きゃぁぁぁぁ~!た、た、たたた・・・」 ラブ「ああ、あれは駅前のタコ焼き屋さんだよ。美希たん、あんな小さな看板、読めたの?じゃあ全然、目が悪くなんかないじゃん。」 せつな「やっぱり、好きなものと同じくらい、嫌いなものって目に入っちゃうものなのね。」 美希「コラ、せつな~!もう、許さないんだからぁ!!」 ~END~
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140文字SS:スイートプリキュア♪【2】 1.[競作2015]【スイートプリキュア・響】君の気配(大切な親友の事ならなんだってわかる…か?)/mizuiram 「どしたにゃ?」 キョロリと辺りを見回す響にハミィが首を傾げる。 「奏の気配がする」 「「!?」」 ほんとに?とあこ。 さすが親友ね、と感激するエレン。 そして。 「みんな~!お茶にしましょ!」 … 「…もしかして」 「…気配って、ケーキの匂いの事にゃ?」 「…ある意味凄いわね」 「ん~美味し~!」 2.[競作2015]響&奏「大切だから、渡したい」/ねぎぼう 「あ~美味しかった!」 「こぉら~ひびきぃ~!今日という今日は絶対許さないから!」 相変わらず逃げ足は速い。 「……もう、大切なケーキなのに。あんまりよ……」 ふと見ると牛乳瓶に一輪の赤い薔薇と ドイツ語で『カナデ、ダイスキ』のメモ。 「響の……馬鹿。最後のチョコレートはちゃんと渡したいの」 ※響が卒業後ドイツに音楽留学が決まっているという シチュエーションで 3.[競作2015]【スイートプリキュア・響&奏】大切な絆/mizuiram 「あの…ごめんね響」 「えー何がー?」 「何が、って…さっきのは私が悪かったわ。意地を張り過ぎて…その…」 「そうだったっけ、覚えてないや」 「…え?だってあんなに怒ってたのに!?」 4.「黒川の手帳」/一六◆6/pMjwqUTk 「音吉さんの本で読んだの!こんな手帳が凄い値段で売れたって話」 「じゃあその手帳も売れるニャ?」 「エレン!売れたのは手帳じゃなくて中身だから」 慌てる奏にエレンが手帳を抱き締める。 「これは売らないわ。友達や学校の大事なメモで一杯だもの」 「ま、買う人も居ないけどね」 響が苦笑いで呟いた。 5.「Quiet session」(静かなセッション)/ゾンリー あの頃から随分伸びた髪をベットに横たわらせて、 窓から深い藍色の夜空を見上げる。 手に持った白フレームの写真立てには 小さな三人組がさい最上の笑みを浮かべている。 「スズ、奏太、元気にしてるかな……」 視線を落とすと、庭に植えられた向日葵が 煌めく星とセッションするように静かに咲いていた。
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スター☆トゥインクルプリキュア レス番号 作品タイトル 作者 備考 現7-12 大切な友達のために ドキドキ猫キュア お世話になったから、お礼をするのは当たり前。というより、喜んでくれるあの子の顔を想像するのが楽しいのです――。まどかとえれな、キッチンに立つ二人の目的とは……? 競7-14 「最初の言葉」 競作スレ7-122様 思いがけないみんなとの再会。見た目はすっかり大人になって、あの頃とは変わっているのに、やっぱりひかるは変わらなくて。それを見たわたしが、まず口にした言葉は――。十五年後、再会直後のひかララです! 競7-15 雨上がりの空に、虹は輝く 一六◆6/pMjwqUTk 休暇を利用して惑星レインボーの様子を見に行くことにしたララ。久しぶりのユニとの再会に心をときめかせるが、なぜかユニの表情は冴えなくて……。出会いと交流がもたらす変化に怯えるレインボーの住人達。珍客もやってくる中、彼女達が出した答えとは? 競7-31 『孤独のグル眼』 Mitchell Carroll ったく……あたいだって、たまには時間や社会に囚われず、幸福に空腹を満たしたいっつーの。え?いつも自分勝手で自由?そんなことないっつーの!まさかのあの作品のパロディ登場。って、これじゃあたいは孤独になれないっつーのぉぉぉ! 全2-525 『逃亡者達』 Mitchell Carroll 「待つルン!」たった一人でララが追いかける者。それは……。
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「ねぇねぇ、これだよね?美希ちゃん可愛い!」 祈里は開いたファッション雑誌を美希に見せ、小声ながら興奮気味に賛辞を贈る。 ありがと、と少し苦笑いで答える美希に祈里は軽く小首を傾げる。 クリスマス一色に彩られたショッピングモール。今日は二人で買い物だった。 フラリと立ち寄った書籍コーナーで美希の載った雑誌を見付け、 祈里は我が事の様にはしゃいでいる。 「どうしたの?あんまり気に入らない?」 「うーん、何て言うか…ちょっと可愛いらし過ぎるかなぁ…って」 「そんな事ないよ!確かにいつもとイメージは違うけど。 すっごく素敵だもん!」 どうしてアナタがムキになるのよ、と美希の苦笑が深くなる。 でも、美希の事を悪く言うのは美希本人ですら許さない!と 言わんばかりの勢いに嬉しくなるのも確かだ。 この写真の美希は、長い髪をツインテールに結い、毛先をくるくると 巻いている。 メイクもいつもは切れ長を強調させるような、クッキリした目元にしている 事が多いのに少しタレ目気味に作ったアイラインに付け睫。 チークも寒さで紅潮した感じを出すために、明るいピンクを頬に広めに入れている。 ふわふわした耳当てに、ハイゲージのざっくりしたミニのニットワンピ。 オーバーニーソックスにレッグウォーマー、足元もふんわりした ブーティー。 全体を白でまとめ、ポーズも凍えた手を温める為に息を吹き掛ける 様に口元に手を持っていっている。 一歩間違えば子供っぽいを通り越して、媚びたあざとさが見えそうな 構図だが、敢えて長身で大人びた容姿の美希がする事によって 絶妙の甘さ加減になっている。 「うん、ありがと。でもこういうのはブッキーのが似合いそうだよね」 「そうかなぁ?わたしが着たらコロコロになりそう」 「そんな事ないわよ。まあ、全身白は膨張して見えそうだけど、 ちょっと濃い色でポイント付けたりしたらきっと可愛い」 「ほらぁ、やっぱり。こんなのは美希ちゃんみたいにスラッとしてないと 厳しいんだと思った」 「だから、似合うって言ってるのに何で言葉の裏を探るかなぁ」 「いいよー。自分でも丸いのは知ってるもん」 祈里の拗ねた振りの上目遣いを、美希は苦笑では無い笑顔で受け流す。 ラブやせつなには少し申し訳ないが、こうして二人きりで過ごせるのが嬉しい。 今年のクリスマスは四人でのパーティは無理になってしまった。 桃園家はクリスマスに合わせて旅行らしい。 かと言ってクリスマス前には四人とも予定が中々噛み合わず、 25日を過ぎてからパーティと言うのも…と、何となくお流れになってしまった。 でもまあ、忘年会に初詣。新年会だってあるし、集まる機会はいくらでもある。 四人でワイワイ出来れば名目は何だっていいのだから。 「でもつまらないね。今年はラブちゃんもせつなちゃんもいないなんて」 雑誌のページを捲りながら唇を尖らせる祈里に、美希の高揚していた 気分はパチンと音を立てて萎んだ。 (アタシと二人きりじゃつまらないの?) 悪気が無いのは分かる。でもどうせなら二人で楽しく過そう、 そう言って貰いたいと思うのは我が儘なんだろうか。 チラリと祈里の読んでいるページに視線を走らせる。 『冬のモテファッション』とデカデカと特集されたコーナー。 如何にも『男子ウケ』を狙った甘ったるくガーリーなコーディネートや、 ティーンズ向け雑誌だからあからさまな露出は控え目だが、体の線を 強調するピッタリしたトップスにミニスカートやショートパンツ。 美希の心にチリッと小さく火傷したような痛みが走る。 あんな服は祈里には似合わない。 ただでさえ女の子らしい祈里なら、あまりにもフリフリした格好は 却って嫌味に見える。 それに、小柄で華奢なわりに発育の良いのを少し気にしている祈里なら、 あんな胸や腰の曲線を見せ付ける様な服はいつもは興味を示さないのに。 (誰かにモテたいワケ……?) 最近こう言う事が増えた。 祈里の些細な言動が心を引っ掻き、ささくれさせる。 祈里は可愛い。でも本人はどれくらい自覚しているんだろう。 同世代の男の子にとっては、手入れの行き届いた美少女然とした 美希よりも、ほんわかおっとりとした祈里の方が受けが良いだろう 事も想像がつく。 今は、まだいい。真面目なミッション系の女子校。ましてや中学生なら 彼氏持ちなんて極一部の積極的な子達だけだろう。 それに祈里なら、あまりそう言うタイプとは接点がなさそうだし。 でも高校生になったら? きっと祈里の周りの真面目な子達も普通に異性に興味を持ち始めるだろう。 友達に彼氏が出来た、なんて話を身近で耳にするようになれば、 祈里はどんな反応を見せるのか。 それに祈里は獣医を目指しているのだから、大学は獣医学科のある所を 受験するはずだ。 それなら当然共学になる。 祈里のような可愛い子がフリーでいたら周りが放っておく訳がない。 いずれ同じ年頃の異性に恋をして、恋人に誉めて貰う為のメイクや 服装を研究したり………。 (馬鹿じゃないの?どこまで妄想してるんだか) 自分で自分を茶化して見ても、虚しくなるだけだった。 マッチで擦った様な小さな炎が胸を焼く。 その炎はまるで薄い紙を一瞬で燃え上がらせる様に、美希の苛立ちに 火を付ける。 些細な嫉妬を燃やした煤が心を内側から黒く汚していく。 祈里の所為じゃない。 彼女にとって、自分はただの幼馴染みの友達なのだから。 まさかその友達が、邪な欲望を隠した目で見ているなんて想像もしないだろう。 「…美希ちゃん、美希ちゃん!」 「え?あ、何?」 「携帯、鳴ってるんじゃない?」 「えっ?!」 バッグの中で携帯が振動している。 ぼんやりと馬鹿みたいに物思いに耽っていてまったく気づかなかった。 「…あ、マネージャーから…」 「掛け直す?」 「…うん、ちょっと待ってて」 (はぁぁ……重症かも…) その場を離れながらため息をつく。 クリスマスを二人で過ごしたい。ただそれだけを言うのに何をグズグズしているのか。 別に祈里は何の躊躇いも無く受け入れてくれるだろう。 仲良しの友達からの誘いなのだ。断る理由なんて無い。 (好き…って言ったらどうなるんだろう) あの無邪気な笑顔が凍り付くのが恐い。 はっきりとは断られなくても、ほんの少しでも拒絶や嫌悪を感じてしまったら…。 立ち直れる気がしない。そうでなくても告白なんてしたら元の気の置けない 幼馴染みには戻れない。 でも、もうそろそろ限界なのかも知れないと感じていた。 さっきの様に祈里の何気無い言葉一つにいちいち苛立ちを覚え、 ストレスを募らせる。 自分のいない所で祈里がどんな風に過ごしているのか気になって仕方がない。 理不尽な苛立ちを祈里にぶつけてしまうのも時間の問題だった。 祈里には美希の苛立ちの意味すら分からないだろうに。 「……あの、困ります…」 「いいじゃん、男二人でカフェとか入り難いんだよね」 「そうそう、一緒に行こうよ。奢るからさ」 「…でも、その…友達を待ってるんで…」 「だからさ、だったら友達も一緒に!」 「二対二で却ってちょうどいいし…」 半ば上の空で掛けた電話に手間取り、戻ってみると祈里が二人組の 高校生くらいの男に絡まれていた。 困った顔できっぱりとした拒絶も出来ない祈里に、押せば何とかなりそう、と ばかりに迫る二人組に、美希の落ち着きかけていた苛立ちに再び 火がくべられる。 「この子に何か御用ですか?」 顔だけは完璧な微笑みを浮かべて祈里を引き寄せる美希に、祈里が 安堵の息をつく。 二人組の高校生は、現れた『友達』が想像を遥かに越えた美少女なのに 幾分気後れしたような表情を見せた。 美希は相手の僅かな怯みをすかさず捉え、追い縋る隙を与える 暇も無くあっと言う間にその場を後にした。 そこから先はよく覚えていない。 気が付けばショッピングモールを出るどころか、どこをどう歩いたのか 人気の無い裏道を速足で歩いていた。 「…待って!ねぇ、美希ちゃん、待ってよ…」 祈里が小走りに追って来る。 「ごめんね、あの、わたしがぼんやりしてるから…」 「……まったくだわ…」 吐き捨てる様な美希の呟きに、祈里がびくりと竦むのを感じた。 どうしよう。イライラが止まらない。 こんな事、言いたいんじゃないのに。 「あ、あの、あのね。最初はカフェの場所聞かれただけなの。 そしたら、なんか、分からないから案内してとか言われて…」 「ショッピングモールの中のカフェなんだから本当に分からないなら 店員に聞くでしょ?!女の子が一人の所にわざわざ声かけるって、 どう考えてもナンパでしょ?気付こうよ」 「そっか、そうだよね…」 「知らないので店員さんに聞いて下さいとでも言って、すぐにその場を 離れればいいでしょ?何を馬鹿正直に相手してんのよ!」 「でも…美希ちゃんを待ってるとこだったし…」 「そんなの、戻ってその場に居なければ電話でもするし!第一何の為に 携帯持ってるの?移動しましたってメールでも打てばいいだけだし!」 「……あ、うん。あの、ごめんなさい、何だか焦っちゃって…」 「ぼんやりしてるから、あんなチャラいのに絡まれるんだからね!」 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。 祈里は悪くない。そんな事分かってる。 あれで良かったんだ。祈里は美希とは違う。 しつこいナンパを相手に気を悪くさせないように断るスキルなんて 持ち合わせていないのだから。 下手な断り方をして恨まれたりしたら却って面倒な事になる。 自分ならあの程度なら軽くあしらえるのだから、祈里を責めるのはお門違いだ。 「………だから、次から気を付けるのよ…」 大きく息を吸い込み、気持ちを落ち着かせて何とか刺のある口調を 引っ込める。 「うん!」 美希が語気を和らげた事にホッとしたのか、駆け寄った祈里がそっと 手を繋いできた。 美希は祈里の顔を見ない様に、正面を睨む様に見据えたまま 唇を引き結ぶ。 どうしてこんなに簡単に手なんか握るんだろう。 今の自分には絶対に出来ないのに。 彼女は何の気負いも見せずに幼い頃と変わらない態度で接してくる。 口を開けばまた余計な事を言ってしまいそうで美希は黙って しんと静まり返った道を歩き続ける。 コツコツと靴音だけが響く中、さすがに繋いだ手を振りほどく事は出来なかった。 口を聞かないものの歩調を祈里に合わせて弛め、軽く手を握り返す。 そんな美希に、怒りが治まったと思ったのか祈里は少し遠慮がちに 話掛け始める。 「美希ちゃん、ごめんさない」 「…いいよ。アタシこそ、ゴメン…」 「ううん、でも美希ちゃんがいてくれて良かった。わたしじゃあんな風に 上手くかわせないもん」 そんな風に言われるのも微妙に複雑だ。 何だか自分が世慣れた遊び人の様に思われてると感じるのはさすがに ひねくれてるだろうか。 そんな美希の気も知らず、すっかり安心した様子の祈里はご機嫌に 話しかけてくる。 「あのね、それでね、美希ちゃん。クリスマス何だけど予定ある?」 「………………」 「良かったらさ、ラブちゃんもせつなちゃんもいないけど二人で パーティしようよ?」 「…………………」 「レミおばさん、毎年イブはパーティに出掛けるでしょ?だったら お泊まりでお喋りも出来るし…」 美希は祈里の手を握り潰さないように必死だった。 クリスマスを二人で。何度も喉元まで出かかっては飲み込んで来た 台詞をあっさりと、まるで拗ねた美希のご機嫌取りのネタにする様に サラリと言ってのけた祈里に殺意に近いものさえ覚えた。 どこまで『安パイ』扱いなんだろう。 最初から分かってた事じゃないか。 ただの友達で、ただの幼馴染みで、しつこいナンパからも守ってくれる お姉さんポジションで。 小さな頃からお泊まりどころかお風呂だって一緒に入ってた。 そんな相手に今更恋愛感情なんて抱くはずがないじゃないか。 馬鹿みたいだ。一人で勝手にキリキリ舞いして、それを相手に 悟られないよう必死になってる。 (もういい。どうでもいい。何て思われたって構わない) これ以上、無理。 友達でいるのも、想いを押さえ込むのも。 どうしたって傷付けるだけ。だったら……… だったらいっそ、嫌われてしまった方がマシじゃないのか。 「ねぇ、何か欲しい物とかある?プレゼント、奮発しちゃうよ?」 「……何でもくれるの…?」 「ん、あんまり高価な物とかは無理だけど…。でも、でも、なるべく ご希望には添うよ!わたしがあげられそうな物なら何でも」 「本当に…?」 「うん!」 「だったら、ブッキーをちょうだい」 ハタと祈里の足が止まる。 「何でもくれるんでしょ?だったら、ブッキーを全部ちょうだい。 アタシのモノになってよ」 「……あの、美希ちゃ」 祈里が上擦った声で呼び掛ける前に、美希は思い切り繋いだ手を振りほどき、 祈里に向き合った。 「好きなの!ずっとブッキーが好きだったの!もう色々無理なの! ブッキーがナンパされてるトコとか見たくないし!こんな風に手繋いだ だけで心臓バクバク言わしてるのバレないようにするとかヤなのっ!」 睨み付ける様に祈里を見据えた瞳から涙がぽろぽろ零れる。 「ゴメン、気持ち悪いよね。幻滅だよね。アタシ、ブッキーがニコニコ してる横でずっとどうやったらブッキーを自分だけのモノに出来るかとか 考えてた…」 「ねぇ、美希ちゃん。聞いて…」 「だからっ!アタシのモノになってって言うのもどんな意味か分かるでしょっ?!」 「ね、だからね、ちょっと…」 「一度、だけでいいから…。一回、アタシの好きにさせてくれたら 二度とこんな事言わないから…」 何度も美希を遮って言葉を掛けようとする祈里の姿など見えない様に 握りしめた拳を振るわせ、泣きじゃくりながら想いを吐き出す。 「お願いだから。一晩、アタシの恋人になって。そしたら、忘れる…」 「…………」 「ブッキーが、アタシの顔なんかもう見たくないって言うなら消えるし…」 「………」 「ホントよ。高校に上がったら寮に入るか一人暮ししてもいいし…」 祈里の声も、表情も、まったく美希の目にも耳にも入っていない。 と言うより見られなかった。 どんな顔で美希の滅茶苦茶な告白を聞いているのか。 呆れてその場で振られたって文句は言えない。 むしろ、「サイテー!」とひっぱたいてくれてもいいくらいだった。 その方がきっぱり諦めもつくかも知れない。 伏せた視界の端で祈里が深呼吸しているのが見えた。 「………いつ?」 「…えっ?」 思わず顔を上げる。 静かに凪いだ表情の祈里が見つめていた。 「イブに行けばいい…?何時頃?」 「……は…8時、くらい。その頃にはママも出掛けてるから…」 「分かった。じゃ、うちのお母さんにも美希ちゃんちに泊まるって 言っておくね…」 「………うん…」 じゃ、イブにね。 そう言って祈里は踵を返すと茫然と佇む美希を残して、急ぐでもなく 立ち去って行った。 「…え?……嘘でしょ…?」 もしかして、オーケーなの…? 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「お待たせ、せつな」 「もう、遅いわよ、美希」 「ごめんごめん。ジュース奢るから、許してよ。ね?」 「もう。しょうがないんだから」 腕を組んでしかめっ面を見せる彼女の姿に、せつなと久しぶりに二人でお出かけするから、つい気合い入れちゃった ら遅れましたた、なんて言えないわね、と美希は思ったのだった。 Honey day, My Secret 「それで。今日は、どこに行くの?」 「色んな所に行きたいわ。プレゼントを買いたいから」 「プレゼント? ああ、クリスマスの」 「ええ、そう。ラブに、お母さんに、お父さん。タルトとシフォンの分もね」 「なるほどね。それで、あたしに手伝って欲しい、と」 「そういうこと。美希なら、お店、たくさん知ってるでしょ」 「もちろん。任せといて。いーっぱいお店、紹介してあげるから」 「頼もしいわね。ありがと、美希」 「まずは、ここなんてどう?」 「玩具屋さん? ああ、タルトとシフォンのプレゼントね」 「そうそう――――あ、これなんてどう? アズキーナそっくりじゃない、このぬいぐるみ」 「あら、ホント。こっちのは、タルトにそっくり。そうだ、アズキーナにはタルトのぬいぐるみをプレゼントしようかしら」 「それ、いい考えだと思うわ」 「じゃあ、決まりね。アカルンにお願いして、今度、連れてってもらいましょ」 「せっかくだから、タルトも一緒に連れて行って、二人に渡してあげましょうよ」 「さっすが美希、完璧ね――――ところで、シフォンにはこれなんてどうかしら?」 「ロボットの玩具? どうして、これを?」 「電池で動くんでしょ、これ。ほら、玩具の国に行った時に、シフォンが楽しそうに追いかけてたから」 「そっか。そうだったわね。うん、いいんじゃない」 「良かった、美希にそう言ってもらえて」 「次はお父さんのプレゼントよね? じゃあ、この店なんていいんじゃないかしら」 「紳士服売り場? でも、そんなにお金、持ってないわ」 「わかってるってば。こういうのはね、気持ちが大事なの。ほら、このネクタイなんてどう? これなら、せつなのお小遣 いでも買えるでしょ?」 「あ、ホント。結構、リーズナブルなのね」 「ピンキリだけれどね。さ、せつなのセンスで選んでみたら?」 「うーん――――これかしら?」 「……赤が好きなのはわかるけれどね、せつな。それ、さすがにおじさんぐらいの年の人には似合わないと思うわよ ……」 「も、もちろん冗談よ。ほ、ホントはこっちがいいと思ったの」 「ジー」 「ホントだってば!!」 「おばさまとラブの分は、この店でどう?」 「――――可愛い!! 色んなアクセサリーがあるのね」 「そ。しかも、どれも安いし。結構、穴場なのよ、ここ」 「やっぱりすごいわね、美希は――――あ、これ、綺麗。お母さんにピッタリ」 「ブレスレット? 確かに、おばさんに似合いそうだけど、ピッタリって?」 「色のことよ。前にね、私とラブに、お母さんがお揃いのブレスレットを作ってくれたの。で、このブレスレットが、赤と ピンクで出来てるから」 「なるほどね、二人の娘の気持ちを込めて、ってことか」 「うん。そういうこと」 「いいんじゃない? そういうの、あたし好きよ――――あ、ごめん、ちょっと電話がかかってきちゃった。外で話して くるから、しばらく見てて」 「ええ、わかったわ」 「ごめん。お待たせ。事務所の人からだったわ。お仕事の話で――――ごめんね?」 「いいわよ、謝らなくても。それより、ラブの分なんだけど」 「何か、いいのがあった?」 「ええ。これなんて、どうかしら?」 「……随分、いっぱい買うつもりなのね」 「そうかしら?」 「籠にいっぱいじゃない」 「どれどれ――――シュシュにヘアピンに、ネックレスにチョーカー、イヤリングにストラップ?」 「ラブ、喜んでくれるかしら」 「喜ぶと思うわよ。その前に、ビックリするだろうけど!!」 「改めて、今日はありがと、美希」 「別にいいわよ。あたしも楽しかったから。それより、いいの? アイス、奢ってもらっちゃって」 「もちろん。本当に、感謝してるんだから」 「――――アイスだけ?」 「え?」 「感謝の気持ちって、アイスだけなの?」 「――――? アイス、だけじゃダメだった?」 「ううん――――別にいいけど――――」 「何を落ち込んでるの? 変な美希」 「それじゃあね、せつな。皆、喜んでくれるといいわね」 「うん、ありがと、美希。じゃあ、またね」 去っていく美希の背中を見ながら、せつなは少し、唇を尖らせた。 もう。美希ったら、あんなこと、言わなくてもいいのに。 彼女のポケットには、小さな袋が一つ。 美希が電話をかけに外に出た隙に、急いで買ったもの。 赤の石が輝く指輪。 もちろん、宝石なんていいものじゃなくて、せつなにも買えるぐらいのお値段だったけれど。 それでも、見た瞬間に思ったのだ。 これを美希にあげよう、と。 彼女の、細い、雪を欺く白の指に、その赤はきっととても映える。 例えば、美希が髪をかきあげる時、左手の薬指にその指輪が光っていたら。 想像して、せつなはつい、こらえきれずにやけてしまう。嬉しくて、幸せで。 本当なら、今日のお礼にと渡したかった。 なのに、美希があんなことを言うから、つい、渡しそびれてしまった。 けど、まぁいいか。 せつなは気持ちを切り替える。 クリスマスイブまで、もう少しだ。 イブの夜に、アカルンで彼女の部屋に行こう。 眠ってる美希の枕元に、プレゼントを置いておこう。 そして――――気が向いたら、もう一つぐらい、プレゼントをあげてもいい。 彼女の頬に、柔らかなキスの、プレゼントを。 せつな、プレゼント、買ってくれたかなぁ。 美希は思いながら、足取りも軽く家路を歩く。そこには、さっき、せつなに見せた落ち込みはかけらも感じられない。 何故なら、それは演技だったから。 騙そうと思ったわけではない。ただ、ちょっと意地悪をしただけ。 だって、最初に騙そうとしたのは、せつなだったから。 何気ないふりを装って、彼女に指のサイズを尋ねてきたり。 チラチラと指輪のコーナーを見てるにも関わらず、頑なにそこには行こうとしなかったり。 バレバレなのよね。ホント、正直なんだから。思って、美希は苦笑する。 わかりやすすぎる彼女の態度に、ついつい美希の悪戯心が刺激されてしまったのだ。 多分、せつなは今日のお礼に、とプレゼントをくれるつもりだったのだろう。 だからこそ、先にあんなことを言ってみた。そうしたら、せつなのことだから、意地を張って何もなかったふりをする だろう、と見越して。 そして、案の定だった。 次に、せつなが考えることも、美希にはわかる。 クリスマスイブの夜に、アカルンを使って、自分の部屋を訪れてくるだろう。 枕元にプレゼントを置きに。 美希は、つい、にやけてしまう。 もし、あたしがその時に起きていて。 サンタのせつなに抱きついたりしたら。 用意したプレゼントを、渡してあげたりしたら。 あの子、どんな顔になるのかしら? 想像して、美希はやっぱり笑ってしまう。幸せな気持ちに包まれて。 楽しみだな。クリスマスイブ。 それぞれの家路を歩きながら、二人の少女は。 同時に、そう思ったのだった。
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宮本絵美子 東映アニメーションプリキュアワークス 魔法つかいプリキュア! オフィシャルコンプリートブック 発売日:6月26日・3月18日 『魔法使いプリキュア!』のキャラクターデザインを手がけた 宮本絵美子氏の初のイラスト集!! 版権イラストはもちろん、設定資料や本編の原画なども大量に収録! ファン必携の一冊です! ここを編集 2016年2月放送開始。Go! プリンセスプリキュアに続くシリーズ第13作。第14作にキラキラ☆プリキュアアラモードが、劇場版に~奇跡の変身!キュアモフルン!がある。 http //www.toei-anim.co.jp/tv/mahotsukai_precure/ シリーズディレクター 三塚雅人 原作 東堂いづみ シリーズ構成 村山功 キャラクターデザイン 宮本絵美子 美術デザイン 増田竜太郎 色彩設計 佐久間ヨシ子 撮影監督 白鳥友和 CGディレクター 小林真理 編集 麻生芳弘 音響効果 石野貴久 録音 川崎公敬 音楽 高木洋 アニメーション制作 東映アニメーション 脚本 村山功 山下憲一 伊藤睦美 坪田文 鐘弘亜樹 演出 三塚雅人 鈴木裕介 暮田公平 座古明史 政木伸一 芝田浩樹 平山美穂 中島豊 佐々木憲世 三上雅人 小山賢 岩井隆央 土田豊 村上貴之 広嶋秀樹 鎌仲史陽 絵コンテ 越智一裕 中島豊 門由利子 平山美穂 黒田成美 田中孝行 三塚雅人 大塚隆史 作画監督 爲我井克美 松浦仁美 フランシス・カネダ アリス・ナリオ 稲上晃 赤田信人 五十内裕輔 渡辺奈月 上野ケン 河野宏之 伊藤公崇 中谷友紀子 青山充 藤崎真吾 宮本絵美子 ■関連タイトル 魔法つかいプリキュア! Blu-ray vol.1 プリキュア20周年アニバーサリー プリキュアコスチュームクロニクル 増補改訂版 上北ふたご プリキュア20周年記念イラスト集 Futago Kamikita×All Precure 宮本絵美子 東映アニメーションプリキュアワークス わたしたちは、ぜったい負けない! ふたりはプリキュア名言集 魔法つかいプリキュア! 設定資料集 決定版 魔法つかいプリキュア! オフィシャルコンプリートブック 魔法つかいプリキュア! 2017年 01 月号 アニメージュ 特別増刊号 魔法つかいプリキュア! キューティーフィギュア+ 食玩・ガム プリキュア エンディングテーマコレクション 2004~2016 DVD付 プリキュア オープニングテーマコレクション2004~2016 期間生産限定DVD付 映画プリキュアオールスターズ みんなで歌う♪奇跡の魔法! Blu-ray特装版 OP&EDテーマ DVD付き初回限定盤 魔法つかいプリキュア! リンクルステッキDX おしゃべり変身モフルン 魔法つかいプリキュア! バトンタッチリンクルストーンセット プリコーデドール 魔法つかいプリキュア!キュアミラクル1 だいすきプリキュア! まほうつかいプリキュア プリキュアオールスターズ ファンブックはる・なつ 魔法つかいプリキュア! まるわかりだいずかん 魔法つかいプリキュア! へんしんシールえほん rakuten_design= slide ;rakuten_affiliateId= 053df7e0.7c451bd1.0c852203.190c5695 ;rakuten_items= ctsmatch ;rakuten_genreId=0;rakuten_size= 468x160 ;rakuten_target= _blank ;rakuten_theme= gray ;rakuten_border= on ;rakuten_auto_mode= on ;rakuten_genre_title= off ;rakuten_recommend= on ; 随時更新! pixivFANBOX アニメ@wiki ご支援お待ちしています! ムック本&画集新刊/個人画集新刊/新作Blu-ray単巻/新作Blu-ray DVD-BOX アニメ原画集全リスト スタッフインタビューwebリンク集 最新登録アイテム Switch ゼルダの伝説 Tears of the Kingdom Switch 世界樹の迷宮Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ HD REMASTER Switch ピクミン 4 大友克洋 Animation AKIRA Layouts Key Frames 2 小説 機動戦士ガンダム 水星の魔女 1 ONE PIECE FILM REDデラックス・リミテッド・エディション 4K ULTRA HD Blu-ray Blu-ray 劇場版 ソードアート・オンライン -プログレッシブ- 冥き夕闇のスケルツォ 完全生産限定版 Blu-ray 映画『ゆるキャン△』 Blu-ray 【コレクターズ版】 Blu-ray ウマ娘 プリティーダービー 4th EVENT SPECIAL DREAMERS!! Blu-ray 天地無用!GXP パラダイス始動編 Blu-ray第1巻 特装版 天地無用!魎皇鬼 第伍期 Blu-ray SET 「GS美神」全話いっき見ブルーレイ Blu-ray ソードアート・オンライン -フルダイブ- メーカー特典:「イベントビジュアル使用A3クリアポスター」付 ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 5th Live! 虹が咲く場所 Blu-ray Memorial BOX 宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち Blu-ray BOX 特装限定版 地球へ… Blu-ray Disc BOX 完全生産限定版 神風怪盗ジャンヌ Complete Blu-ray BOX HUNTER×HUNTER ハンター試験編・ゾルディック家編Blu-ray BOX BLEACH Blu-ray Disc BOX 破面篇セレクション1+過去篇 完全生産限定版 MAZINGER THE MOVIE 1973-1976 4Kリマスター版 アニメ・ゲームのロゴデザイン シン・仮面ライダー 音楽集 テレビマガジン特別編集 仮面ライダー 完全版 EPISODE No.1~No.98 MOVIE リスアニ!Vol.50.5 ぼっち・ざ・ろっく!号デラックスエディション ヤマノススメ Next Summit アニメガイド おもいでビヨリ アニメ「魔入りました!入間くん」オフィシャルファンブック 『超時空要塞マクロス』パッケージアート集 CLAMP PREMIUM COLLECTION X 1 トーマの心臓 プレミアムエディション パズル ドラゴンズ 10th Anniversary Art Works はんざわかおり こみっくがーるず画集 ~あばばーさりー!~ あすぱら画集 すいみゃ Art Works trim polka-トリムポルカ- つぐもも裏 超!限界突破イラスト&激!すじ供養漫画集 開田裕治ウルトラマンシリーズ画集 井澤詩織1st写真集 mascotte 鬼頭明里写真集 my pace 内田真礼 1st photobook 「まあやドキ」 進藤あまね1st写真集 翠~Midori~ 声優 宮村優子 対談集 アスカライソジ 三石琴乃 ことのは 亀田祥倫アートワークス 100% 庵野秀明責任編集 仮面ライダー 資料写真集 1971-1973 金子雄司アニメーション背景美術画集 タローマン・クロニクル ラブライブ!サンシャイン!! Find Our 沼津~Aqoursのいる風景~ 機動戦士ガンダム 逆襲のシャア 友の会[復刻版] 梅津泰臣 KISS AND CRY 資料集 安彦良和 マイ・バック・ページズ 『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』編 氷川竜介 日本アニメの革新 歴史の転換点となった変化の構造分析 Blu-ray THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS 10th Anniversary Celebration Animation ETERNITY MEMORIES Blu-ray おいら宇宙の探鉱夫 ブルーレイ版 Blu-ray 映画 バクテン!! 完全生産限定版 アイカツ! 10th STORY ~未来へのSTARWAY~ Blu-ray BOX 初回生産限定版 はたらく細胞 Blu-ray Disc BOX 完全生産限定版 Blu-ray 長靴をはいた猫 3作品収録 Blu-ray わんぱく王子の大蛇退治 Blu-ray 魔道祖師 完結編 完全生産限定版 魔道祖師Q Blu-ray Disc BOX 完全生産限定盤 にじよん あにめーしょん Blu-ray BOX 【特装限定版】 Blu-ray 鋼の錬金術師 完結編 プレミアム・エディション Blu-ray付き やはりゲームでも俺の青春ラブコメはまちがっている。完 限定版【同梱物】オリジナルアニメ Blu-ray「だから、思春期は終わらずに、青春は続いていく。」